ロゴ
ご検討の施設・
エリアをご選択ください
東日本エリア
関東の施設
0120-678-723
フリーダイヤルでお繋ぎします
受付時間 10:00〜17:00
西日本エリア
中部・近畿・九州の施設
0120-701-300
フリーコールでお繋ぎします
受付時間 10:00〜17:00

「家に帰りたい」の本当の意味

トラストガーデン横浜ベイ馬車道
「家に帰りたい」「家族はいつ来るの?」その言葉に込められていたのは、記憶ではなく“気持ち”でした。
認知症を抱えながらも、ご主人との暮らしを大切にしてきたA様。環境が変わったことで揺れ動いた心に、私たちはどのように寄り添えるのか。
一人の女性の“居場所”をめぐる時間と、そこに見えた希望のお話です。

 
 

ご主人との二人三脚の暮らしから

 

A様は、長年ご主人と穏やかに暮らしてこられた奥様です。アルツハイマー型認知症の診断を受けた後も、軽度の症状のうちは「まだ大丈夫」と、ご自宅での生活を続けておられました。しかし、認知症の進行とともに同じ話を何度も繰り返すようになり、ご主人が疲れを溜めるように。ご主人へ強くあたってしまうことも増え、A様ご自身が精神的に不安定となってしまったことで、施設へのご入居を決断されました。ご本人にとっても、ご家族にとっても、大きな決断でした。

 

 
  

“居場所づくり”は、そんなに簡単じゃなかった

 

入居当初、A様は1日に5回以上も「家に帰りたい」「家族はいつ来るの?」と、強い帰宅願望を示されていました。ご家族は「この状態で外出したら、また帰宅願望が強くなるかもしれない」と心配され、外出も見送ることに。A様は「ここは私の居場所じゃない」「誰にも必要とされていない」と、深い孤独と不安の中にいらっしゃいました。

 

そこで私たちは、「たくさん話を聴くこと」「できるだけ声をかけること」「得意なお歌を活かしたコーラスレクへの参加」を試みました。しかし1カ月が経っても表情は険しいまま。帰宅願望も変わらず、スタッフに訴えかける姿が続きました。
「こんなに頑張っているのに…」と、スタッフの間にも戸惑いが広がりました。

 

 
  
 
―見えてきた「A様らしさ」―

帰宅願望の原因を見直すために「ひもときシート※」を活用し、A様の心の奥にある思いを整理しました。すると――

 

・話をする時間が決められていたため“話を打ち切られた”と感じていた
・コーラスは好きでも人前に出ることは苦痛だった

 

つまり、私たちのケアは“良かれと思ったスタッフ本位のアプローチ”になっていたのです。そこで、「台所仕事」に注目しました。長年専業主婦をされていたA様にとって、家事は“自分の役割”でした。台所仕事を手伝っていただきながら自然に会話を交わすことで、A様の表情に少しずつ変化が現れました。さらに、得意とおっしゃっていたお裁縫では、簡単な刺し子をしていただくこと。そして、日々のケア内容をスタッフ全員で見える化し、A様との関わりの質と量を意識して高めていきました。

 

※ご入居者の“行動の背景”にある気持ちや生活歴を整理し、スタッフ全員で共有するためのシート

 
 

居場所のある暮らしへ
アプローチを始める前は、外出レクリエーションに参加されても、A様の反応は「覚えていない」「私がおかしいの?」というネガティブなものばかりでした。しかし、台所仕事や刺し子といった“役割”を持っていただくようになってから、A様の反応は変わっていきました。
「この前こんなに大きなパンケーキを食べたのよ!」「すごく久しぶりに〇〇に行ったの!」そんな言葉と一緒に、笑顔がこぼれるようになったのです。
 
 
 
―A様を支えたスタッフの声―

介護スタッフ
「A様の笑顔が見たい!」そんな思いでこの取り組みを始めました。
入居当初よりA様は孤独感と不安感を抱え、見ているだけでも辛くなる状態でした。A様が求めていることは何か?それに自分たちはどれだけ応えられるのか?決してスムーズな道のりではありませんでした。良くなるどころか、悪化しているのではないかと思える時期もあり、何度も挫折しそうになりました。しかしこの取り組み後にA様が安心して生活されている様子や、笑いながら職員と話している様子を見た時は、あきらめずにやってきて本当に良かったと心から思いました。

 

介護スタッフ
チームケアでの取り組みは、私たちの施設にとっても大きな課題でした。失敗と評価を何度も繰り返し、うまくいかない原因を探りました。
「A様の立場に立って考える」という一番大切なことが抜けていたのだと気が付いた時、介護の楽しさを改めて感じました。チームの中心にいるのはあくまでA様であり、ご本人を含めたチーム全体で努力した結果、やっと報われました!そして、一番頑張っていたのはA様だと気付きました。このような経験ができる仕事を誇りに思います。

 

 
 
 
「帰宅願望」が教えてくれたこと
アプローチを続けていたある日、A様の表情がふと穏やかに変わりました。以前のように「帰りたい」とスタッフを強く引き留めることはなくなり、「帰りたい」という言葉にも、どこか落ち着きが感じられるようになったのです。
A様の帰宅願望が完全になくなったわけではありません。しかし、そこに込められていたのは“帰りたい”という行動ではなく、「安心できる場所を探している」。そんな心の叫びでした。私たちが向き合うべきは、行動ではなく、その“奥にある不安や思い”。だからこそ、A様にとっての“役割”や“安心できる関係性”を築くことが何よりも大切でした。私たちはこうした気づきを大切にしながら、お一人おひとりに寄り添う認知症ケアを、チーム一丸となって続けてまいります。

これらの記事もよく読まれています

一覧を見る一覧を見る
CONTACTお問い合わせ
「選び方がわからない 」、「 費用が知りたい 」など
まずは、どなたでもお気軽に
お問い合わせください。