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もう一度、 味わうよろこびを
トラストガーデン用賀の杜
「難しいことは承知しています。でも、以前のように、少しでもいいから口から食べたり飲んだりしてほしいんです。」ホームに入居されたA様のご家族から、そんな願いが寄せられました。 A様は脳梗塞を発症後、特別養護老人ホームで生活をされていましたが、次第に食事の摂取が難しくなり、脱水と誤嚥性肺炎で入院。その後、医療機関での診断により「経口摂取(口から栄養摂取すること)は今後も困難」とされ、胃ろうを造設するに至りました。言葉でのコミュニケーションも難しく、失語症と右上下肢の麻痺、さらには高次機能障害や脳血管性認知症の影響もあり、かつてのような食事や会話を楽しむ日々は失われていました。しかし、入居時にスタッフが「もう一度、お口から召し上がってみませんか?」とお声がけしたところ、A様は力強く頷かれました。そのひとつの動作が、ご本人にも「食べたい」という思いが残っていることを教えてくれたのです。
「できない」ではなく、「できるかもしれない」その一歩が、すべての始まりでした。
まず取り組んだのは、車いすに座ることでした。入居当初、A様は長時間車いすに座ることもできず、活動への意欲も乏しい状態。そこで、嚥下訓練を始める前に、日々の散歩やスタッフとの会話を通じて、徐々に“座る時間”を伸ばすことに注力しました。リハビリスタッフが姿勢を整え、スタッフ全員が日常の中で笑顔や言葉かけを重ねるうちに、A様の表情が少しずつ変わっていきました。笑顔が見られる日が増え、意思を伝えようと声を出す仕草も見られるようになっていったのです。
1. コミュニケーションシートで広がる嚥下訓練
コーヒーやジュースなどA様の好みに合わせた飲み物をトロミ・ゼリーにて用意し、嚥下状態を診ながら嚥下訓練を行いました。言葉での意思表示が難しいA様には、飲みたいものを選べる「コミュニケーションシート」を作成し、ご自身の意思で選ぶ喜びも添えました。
2. 「食べられるかもしれない」が現実に
開始から1カ月後、往診歯科医による嚥下評価を実施。経口摂取可能との見解から、言語聴覚士をはじめ多職種でサポート方法を話し合い、ミキサー食にて昼食の経口摂取をスタートしました。右片麻痺があるA 様でも自分で食事ができるよう、テーブルの選定や自助具・滑り止めマットの検討などの工夫も行いました。
3. 1日3食へ、そして食形態のステップアップへ
昼食からはじめた経口摂取は、段階的に進めたことで順調に進み、訓練開始から約1カ月後には1日3食すべてをミキサー食で提供できるように。栄養をすべて「口から」摂る生活が実現したのです。さらにその後も誤嚥することなく、経口摂取を始めてから10日後には、全粥やソフト食など、より自然な形の食形態にステップアップ。さらに20日後には、軟らかいご飯・おかずの軟菜食も食べられるようになりました。

食事の再開とともに、A様の表情には確かな変化が現れました。スタッフの声に頷き、表情を豊かにし、日々の活動にも積極的に関わろうとする姿勢が見られるように。食べることができる。それだけで、日々の暮らしに“楽しみ”が生まれ、 “喜び”が戻ってくる。ご家族の願いが叶った瞬間、スタッフ一同にも忘れられない笑顔が広がりました。
「A様が再び味わう喜びが持てるように」と嚥下訓練を開始しました。しかめた表情が多かったA様が、初回嚥下リハビリでトロミのリンゴジュースを飲んだ際に笑顔で頷かれたことをきっかけに、3食すべて口から食べられるようにサポートさせていただきました。口から食事を摂るためには、嚥下機能のみならず全身状態や様々な事を複合的に考える必要がありますが、介護・看護・作業療法士・理学療法士・ケアマネの協力体制により「食べる」を叶えるサポートが実現しました。
介護スタッフ
入居時は失語症もありコミュニケーションが困難な状況でしたが、多職種で小さな意思疎通の成功例を共有し安心できる環境づくりを心掛けました。コミュニケーション、嚥下訓練を重ねるたび活気が出てくるご本人様にスタッフも元気をもらっていました。今後も、はじめは困難だと思われるお客様に対しても、多職種でアプローチを考え、少しでもご本人様やご家族様の思いを叶えられるケアを行っていきたいと思います。
A様の事例から、私たちが学んだこと。それは「あきらめない気持ち」がケアの原動力になるということです。「もう無理かもしれない」と言われたことでも、「もしかしたらできるかもしれない」と可能性を信じて向き合うこと。その姿勢がご本人の“生きる力”を引き出し、生活の質を高めていきます。これからも、一人ひとりの思いに寄り添いながら、「その方らしさ」を取り戻すお手伝いを続けていきます。
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