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介護の基礎知識
これで安心!はじめての介護保険。介護支援専門員がやさしく解説します

今回は義父が転倒したことにより、介護保険の利用を検討しているけいこさんを例に、利用するまでの流れについてご紹介します。
1.けいこさんのケース
元気だった義父が、転倒し入院。命に別状はないものの、退院後は介護が必要に。
【今回の登場人物】
義父) 80代後半…少しずつ体が衰えてきたものの、基本的に自分のことは自分でできる
義母) 80代前半…まだまだ元気に生活
けいこさん) 60代前半…専業主婦
夫) 60代前半…会社員
義母と2人で暮らしていた80代の義父が転倒により脚を骨折。入院中の環境変化による影響か、認知症の症状もみられ「今までのように生活するのは難しいかもしれない」と医師に言われたけいこさん。病院のソーシャルワーカーに教えてもらい、併設する介護施設に勤務する介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護保険について話を聞いてみることにしました。
―けいこさん
病院のソーシャルワーカーから、退院後は介護保険サービスの利用を勧められています。しかし、介護保険の知識がなく、利用の仕方や受けられるサービス、費用についてもイメージできず、何から始めていいのかもわかりません。
―ケアマネジャー
初めての介護保険利用ですね。介護保険は介護認定の度合いによって受けられるサービスや費用などが異なります。まずは、申請方法から順を追って説明していきましょう。
2.そもそも介護保険とは?
―ケアマネジャー
介護保険は、40歳以上の人が保険料を納め、必要になったときに介護サービスを利用することができる制度です。被保険者は、65 歳以上の方(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられ、第1号被保険者は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。第2号被保険者は、加齢に伴う疾病(特定疾病※がん(末期)、関節リウマチ、骨折を伴う骨粗鬆症等)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。 介護サービスを利用するためには、まず住んでいる自治体による「要介護認定」を受ける必要があり、 認定は「要支援1~2」または「要介護1~5」の7段階に分かれ、どの認定を受けたかによって受けられるサービスが変わってきます。
―けいこさん
認定を受けるには、どのようにしたらよいのでしょうか?
―ケアマネジャー
まずは、住んでいる市区町村の窓口で申請をします。 今回は、けいこさんとそのご両親がお住いの世田谷区を例にご説明しますね。世田谷区の場合、申請できる場所が数か所あります。世田谷区では「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」や、「地域にある総合支所の保健福祉課、地域支援担当窓口」で申請することができます。 申請からサービス利用開始までの流れは下記のとおりです。
1.申請(各自治体の窓口に行く、または郵送で申請)
2.認定調査(区の職員や認定調査員による訪問、聞き取り調査、かかりつけ医による主治医意見書などにより状況を確認)
3.審査判定と認定(申請から認定通知まで原則30日以内)
4.ケアプラン作成(地域包括支援センターや、居宅介護支援事業者などのケアマネジャーと相談する)
5.サービス利用開始
申請には、本人確認書類や保険証などが必要です。前もって確認して行くようにしてくださいね。
―けいこさん
書類提出だけでなく、訪問による調査やケアマネジャーとの相談などもあるのですね。早めに準備して申請しようと思います。
参考
※厚生労働省「介護保険制度の概要」
※厚生労働省 介護事業・生活関連情報検索「サービス利用までの流れ」
※世田谷区「介護保険の相談窓口」
3.介護保険では、具体的にどのようなサービスを受けられる?
―けいこさん
申請の方法や介護認定が必要なことなどは分かりましたが、実際どのようなサービスを受けられるのでしょうか?
義母は元気ですが、自分より体の大きな義父を介護することは難しいと思います。私は比較的に都合をつけやすいですが、夫はまだ仕事をしており、同居ではないのでいろいろと心配です。
―ケアマネジャー
そうですよね。介護保険サービスには、「要支援」の方が介護予防を目的としたリハビリやサポートを受けられる「予防給付」と、「要介護」の方が介護サービスを受けられる「介護給付」があります。サービス内容も、自宅で受けられるもの、施設で受けられるものなどさまざまです。 けいこさんの場合、お義父様が脚を骨折して入院中ということなので、入浴や排泄、食事などの基本的な生活をどのくらい自立して行えるのか、また、認知機能がどのくらい低下しているかによっても変わるかと思います。まずはご本人の意思も含めて、在宅で介護サービスを受けるのか、それとも施設に入所(入居)して介護サービスを受けるのかなど、ケアマネジャーと相談する必要があります。そしてケアプランを作成し、計画に沿って受けるサービスが決まるという流れです。
要支援・介護度によるサービスの違い
●予防給付
要支援1~2と認定された方が利用できるサービスで、介護予防に適した、軽度者向けの内容・期間・方法で提供されます。自宅で受けれられるサービスには、訪問入浴や、訪問介護(血圧や脈拍、病状チェックや排泄、入浴介助等)、訪問リハビリなどがあり、施設を利用する場合では、通所リハビリやショートステイ、自宅訪問と宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護などのサービスを受けることができます。
●介護給付
要介護1~5と認定された方が利用できるサービスで、要支援よりも介護の度合いが高いためサービスの種類も豊富です。予防給付で受けられるサービスに加え、夜間の訪問看護や定期巡回、老人ホームへの入所によるサービスなどを受けることが可能です。
介護保険給付により受けられるサービス
●在宅介護で受ける「居宅サービス」
訪問や通所により、自宅に住みながら受けるサービス
●施設等で生活して受ける「施設サービス」
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム)等で受ける包括的サービス
●地域特有のサービスを受ける「地域密着型サービス」
地域の実情にあわせて、広域連合の裁量で整備された介護サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、地域密着型特定施設入居者生活介護など) などがあり、地域や自治体によって異なります。種類も保険の適用基準も多様です。
4.介護保険はいくら給付される?負担額は?
―けいこさん
なるほど。要介護度によって受けられるサービスが違うというのは分かりました。ちなみに、医療保険のように利用者が何割かを負担する仕組みなのでしょうか。
―ケアマネジャー
介護保険の場合、要介護度に応じて限度額が設けられており、利用者は介護サービスにかかった費用の1割~3割を負担します※1。
※1…合計所得金額が160万円未満の場合は1割負担、160万円以上220万円未満は2割負担、220万円以上の場合は3割負担が基本ですが、所得の低い方や1ヶ月の利用料が高額になった方については別の負担軽減措置があります
要介護度 | 限度額 | 自己負担額1割の場合 |
要支援1 | 約5万円 | 約5千円 |
要支援2 | 約11万円 | 約1万1千円 |
要介護1 | 約17万円 | 約1万7千円 |
要介護2 | 約20万円 | 約2万円 |
要介護3 | 約27万円 | 約2万7千円 |
要介護4 | 約31万円 | 約3万1千円 |
要介護5 | 約36万円 | 約3万6千円 |
※ 限度額を超えた分は全額自己負担
参考
※厚生労働省「給付と負担について」
※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護保険の費用」
※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
5.実際にかかる費用の目安
―けいこさん
所得によって自己負担の割合が変わり、要介護度によって給付額が違うのですね。では、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
―ケアマネジャー
「居宅サービス」を利用するか、「施護サービス」を選択するかによって費用の目安は異なりますので、それぞれの目安について説明します。
●居宅サービスを利用する場合
在宅介護を選択し「居宅サービス」を利用する場合、例えば1回の訪問入浴料金は1,000円~1,500円(職員の人数、内容、要介護度による)、訪問看護で500円~1,000円(時間や医療的ケアの内容による)、デイケア(6~7時間の通所サービス、食費、教養娯楽費を含む)で1日2,000円~2,500円くらいが大まかな目安です。
※1割負担の場合
※地域や施設によって異なります
※金額の目安は世田谷区内数施設の料金を参考にしています
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、在宅介護の場合、一時費用として平均74万円、月額費用は平均約4.8万円かかるという結果が出ています。一時費用の内訳は、介護用ベッド、車椅子や歩行器の購入、介護リフォーム等です。月額費用の内訳は、訪問介護のヘルパー利用料など介護サービス利用料のほか、食費・光熱費、紙おむつなど消耗品の購入費用も含まれています。介護用品の購入や自宅改修については、介護保険から一定の金額が支給されます。また、福祉用具のレンタルも可能です。
●施設サービスを利用する場合
例)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入所した場合の1ヶ月の自己負担額の目安
●要介護5の人が多床室を利用した場合 | |
施設サービス費の1割 | 約26,130円(871単位×30日=26,130) |
居住費 | 約27,450円(915円/日) |
食費 | 約43,350円(1,445円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約106,930円 |
●要介護5の人がユニット型個室を利用した場合 | |
施設サービス費の1割 | 約28,650円(955単位×30日=28,650) |
居住費 | 約61,980円(2,066円/日) |
食費 | 約43,350円(1,445円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約143,980円 |
―けいこさん
リハビリ中の義父が基本的な生活をどのくらい自立して行えるのか、また、本人の希望や義母にかかる負担なども考慮しながら、費用面も含めて考える必要がありますね。
―ケアマネジャー
そうですね。選択肢はいろいろあります。老人ホームを選択する場合でも、特別養護老人ホームだけはなく、住宅型有料老人ホームや介護付有料老人ホームなどもあります。まずは介護認定の申請をして、ご家族でよく話し合ってみてください。
参考
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
※厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「用語と解説」
※厚生労働省 サービスにかかる利用料
6.まとめ
―けいこさん
初めてのことで分からないことばかりでしたが、申請から利用までの流れ、所得によって自己負担の割合が違うことや、要介護度により受けられるサービスに幅があり、費用負担も違うということが分かりました。
―ケアマネジャー
いつ介護が必要になるかは誰も分かりません。介護されるご本人の意思も大切ですし、周りで支える身近な人たちの生活も大切です。ぜひ、じっくり話し合って検討してくださいね。
※記載されている内容は2025年4月1日時点での情報です。詳しい内容は厚生労働省のホームページ、または市区町村にてご確認ください
記事監修
株式会社ハイメディック所属 社会福祉士(介護支援専門員)