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介護の基礎知識
住み慣れた自宅でこれからも。在宅介護の基本とは?

1. けいこさんのケース
前回までのお話
夫婦で自立した生活を送っていた義父(80代)が、転倒により入院することになったけいこさん。医師から、退院後は車いす生活が想定されるため、自立しての生活が難しいと言われました。介護保険サービスの利用を勧められたものの、介護について右も左も分からなかったけいこさんは介護支援専門員(ケアマネジャー ※以下、ケアマネ)に相談し、「介護保険」や「老人ホーム選び」などについて少しずつ学んでいます。
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今回のお話
義父の介護にあたり、老人ホームに入居するのか、自宅で介護するのか、検討中のけいこさん。前回は、多種多様にある介護施設の特徴や費用について学びましたが、今回は、在宅介護についてケアマネに相談してみることにしました。
【今回の登場人物】
義父) 80代後半…脚を骨折し入院中。車いすでの生活となりリハビリが必要なほか、入院の影響により認知機能の低下がみられ介護保険を利用することに。介護認定は「要介護3」。
義母) 80代前半…まだまだ元気に生活
けいこさん) 60代前半…専業主婦
夫) 60代前半…会社員
2. 在宅介護サービスの種類
―けいこさん
義父母は近隣に住んでいるため、在宅での介護も検討しています。在宅介護を選択した場合はどのようになるでしょうか。家の環境整備をはじめいろいろと不安です。
―ケアマネジャー
そうですね。在宅介護だからといって全て自分で決めて手配しなければならないわけではないので安心してください。要支援、要介護認定を受けている場合、介護保険サービスを利用することができます。在宅介護を決めたら、まずは居宅介護支援事業者へ行き、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらう※ところから始まります。
介護保険サービス利用までの流れは次のとおりです。
※「要介護1~5」の場合は、ケアマネのいる、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)へ、「要支援1~2」の場合は地域包括支援センターに相談し、ケアプランを作成します。
介護保険サービス利用までの流れ
1. 居宅介護支援事業者との契約
居宅介護支援事業者を選んで契約する。
2. アセスメント
ケアマネが自宅を訪問し、利用者の心身の状態、生活環境などを把握し課題を明確にする。
※略して「アセス」とも言う。
3. ケアプランの作成
ケアマネと一緒に利用するサービスの種類や回数を決め、ケアプランの原案を作成する。
4. 話し合い(サービス担当者会議)
ケアプランの原案をもとに、ケアマネと利用者、家族、サービス提供事業者で話し合いを行いケアプランを完成させる。
ケアマネは、介護に関わる各種手続きや、行政・介護サービス提供者との連絡、調整なども行ってくれます。これらのステップを踏んで、ケアプランに基づき介護サービス事業者と契約を結び、サービスの利用がスタートします。
―けいこさん
なるほど、在宅介護もケアプランを作成してからの利用するのですね。相談できる人がいると思うと心強いです。現在の義父の状態でどんな介護が必要なのか、自分では判断がつかないと思います。また、気がかりなのは実家の生活環境です。これまで元気に暮らしていたので、車いすなど必要なものを揃え、手すりをつける必要もありそうです。
―ケアマネジャー
住環境の整備にも介護保険サービスを利用することが可能です。基本的なところから順を追って説明しますね。まず、在宅介護で利用できる介護保険サービスは大きく分けて訪問・通所・宿泊・福祉用具 の4つがあります。
訪問系サービス(自宅に来てくれる)
●訪問介護
資格をもったケアスタッフが身体介護(食事・入浴・排泄など)や、生活支援(買物や調理、掃除など日常生活を送るために必要なこと)を行います。
※お元気な同居家族がいる場合、生活支援は原則対象外
●訪問看護
看護師が医療的なケア(血圧の計測・服薬・必要な処置など)を行います。
●訪問リハビリテーション
理学療法士などが身体機能の維持・回復を目的とした機能訓練を行います。
●訪問入浴
お風呂に入るのが難しい方のために、専用の機材などを使って自宅で入浴介助をします。
●夜間対応型訪問介護
18時~翌8時の間に30分程度の訪問介護を定期的に受けられます。
※要支援1~2の人は利用不可
●定期巡回・随時対応型訪問介護看護
1日に複数回の介助を要する医療ニーズが高い方向けの在宅介護サービスで、365日24時間で対応してくれます。
※要支援1~2の人は利用不可
通所系サービス(施設に通う)
●通所介護(デイサービス)
食事・入浴などの生活支援や、機能訓練などのサービスを受けられます。
●通所リハビリテーション(デイケア)
老人保健施設、病院、診療所などの施設で、医師の指示に基づき、リハビリを中心としたサービスを受けられます。
●認知症対応型通所介護
認知症の方を対象に、食事・入浴などの生活支援や、機能訓練などのサービスを受けられます。
●地域密着型通所介護
食事・入浴・機能訓練などのサービスが受けられます。
※定員18名以下の小規模事業所が対象
●療養通所介護
常に観察を必要とする難病、認知症、脳血管疾患後遺症等方対象にしたサービスで、訪問診療や要問看護に加え、施設での食事や入浴、機能訓練などのサービスが受けられます。
※要支援1~2の人は利用不可
宿泊系サービス(ショートステイ)
●短期入所生活介護
老人ホームなどの施設に短期で入所し、介護や生活支援を受けられるサービス。自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護負担軽減などを目的として実施しています。
●短期入所療養介護
医療機関や介護老人保健施設、介護医療院などに短期で入所し、日常生活上の世話や、医療、看護、機能訓練などを受けられるサービス。療養生活の質の向上および家族の介護負担軽減などを目的として実施しています。
複合型サービス(通い・訪問・宿泊を組み合わせ)
●小規模多機能型居宅介護
利用者や家族の状況に合わせ、通い・訪問・宿泊を一つの事業所が柔軟に提供します。
●看護小規模多機能型居宅介護
医療的なケアも必要な方のための複合サービスです。通所、宿泊、訪問介護に加え、訪問看護も組み合わせることで、介護と看護の一体的なサービスの提供を受けられます。
※要支援1~2の人は利用不可
その他のサポート
●福祉用具の貸与・購入(例:車椅子、手すり、介護ベッド)
※介護度により原則レンタル対象外の用具もあります。
●住宅改修の費用補助(手すり設置、段差解消など)
●自費サービス(介護保険が適応されない、家事代行や配食サービスなど)
―けいこさん
在宅介護サービスといっても、いろいろサービスがあるのですね。
―ケアマネジャー
そうです。訪問や通所、ショートステイなどのサービスは、本人のケアだけでなく介護する側の負担軽減も目的の一つとされています。これらのサービスを利用することで、介護疲れや共倒れを防ぎ、在宅介護を続けるための助けになります。
また、心配されていた住宅環境の整備に関しても、車いすや介護ベッド等の貸与や購入、住宅改修にかかる費用は介護保険で7~9割は負担してくれます。
―けいこさん
それは助かりますね。どのサービスを利用するかについてはケアマネさんと話し合いながら決めていくという形なのですね。
参考
※厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索 サービス利用までの流れ
※厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索 どんなサービスがあるの? – 居宅介護支援
※厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索 公表されている介護サービスについて
3. 在宅介護の費用感
―けいこさん
実際の費用についても知っておきたいです。
―ケアマネジャー
お義父様は要介護3なので中程度の介護が必要と思われます。車いす生活も考えると、移動や入浴、排せつなどに介助が必要となるかもしれません。
一時費用の例
在宅介護では原則として一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)なしでも始められますが、公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査 令和3年によると、一時費用の平均は74万円となっています。ただし、これはあくまで平均値ですので、0円の方もいれば50万円、100万円の方もいて、家の状況や購入するものによっても大きく変わります。限度額はありますが、住宅改修や福祉用具購入にも介護保険は適用されます。
●介護保険の適用例
・福祉用具購入(例:ポータブルトイレ):年度最大10万円まで保険適用
・住宅改修(例:手すり設置、段差解消):最大20万円まで保険適用
月額費用の例
公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査 令和3年によると、訪問介護や訪問看護、デイサービスやショートステイ利用などを含む在宅介護の月額費用は平均4.8万円といわれていますが、事業所の体制や地域性によって自己負担額が変わってきますので、 あくまでも目安になります。
在宅介護サービスを利用する場合は、要介護度ごとに支給限度額が定められていますので、限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)が保険内の自己負担額です。限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となるので注意が必要です。

例えば、要介護3のお義父様が、下記のようなスケジュールで在宅介護サービスを利用したとします。

週末はけいこさんやご主人がサポートできるため、訪問介護は平日の朝と夜の2回利用。デイサービスは平日の日中に2回通い、週末に訪問リハビリを受けるように、1週間のスケジュールを組みました。また、お義母さまの心身のケアを目的にショートステイを2泊3日利用しましょう。その場合のおおまかな月額費用は下記のとおりです。

※ショートステイや通所サービスは基本料金に加え、保険外で食費、居住費、日常生活費が発生しますので、注意が必要です。
―けいこさん
食費や居住費がかからない分、老人ホームへの入居に比べるとかなり抑えられそうですが、どのサービスをどのくらいの頻度で利用するかによって費用は変わるということですね。
―ケアマネジャー
はい。経済面でもそうですし、住み慣れた家で過ごせるというメリットもあります。あとは、ご家族のご協力が必要不可欠となりますので、そこが大きな違いです。その辺りはお義父様のご状況も見つつ、ケアマネと相談しながら、しっかり話し合われてください。
また、先ほどもお伝えした通り、これはあくまでも目安なので、詳しくは担当のケアマネに相談をするようにしましょう。
参考
※公益財団法人生命保険文化センター|「生命保険に関する全国実態調査 令和3年」
※厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索 どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売
※厚生労働省|介護保険における住宅改修
4. まとめ
―けいこさん
そうですね、実際に在宅介護をするとなると、私と義母が中心となってサポートすることになるかと思います。そのあたりも考えながら検討したいと思います。今回はさまざまな在宅で受けられる介護サービスがあることを知ることができ、とても参考になりました。
―ケアマネジャー
そうですね。ケアプランが基本となるため、ケアマネと相談しながらしっかり考えることが大切かと思います。お義父様含め、ご家族みなさんが「いい人生」を送ることができるよう、いろいろと検討してみてください。
記事監修
株式会社ハイメディック所属 社会福祉士・介護支援専門員