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シニアライフ

高齢者の「むせる」には要注意!?「嚥下障害」は早期の対応が大切です。

高齢になり「食事中によくむせる」「薬が飲みにくい」「嗜好が変わった」ということはありませんか?
年を重ねると、歩行機能など体力の低下が起こるように、「飲み込む機能」も老化や病気により低下する可能性があります。その「飲み込む機能」が低下した状態を、「嚥下障害」といいます。
嚥下障害も、早期発見と、体の筋力トレーニングをするのと同じように適切な対応が大切。まずは、その原因とリスクを知り、重症化しないよう、早めの対応を心掛けましょう。

1. 食事中に「むせる」ことがありませんか?

私たちは食べ物を口に入れると、意識せずとも、噛み、飲み込み、食道を通って水分や食べ物を胃まで運ぶという一連の動作を行います。しかし、老化や病気によりその一連の動作のどこかに障害が起こり、「むせる」などの症状がでてきます。この、うまく飲み込めないことを「嚥下(えんげ)障害」と言います。

嚥下障害の症状とは?※

「その方の状態によって症状は様々です。食べるとむせる、形があるものをかんで飲み込めない、食事に時間がかかる、食べると疲れる、食後に痰が出る、食事をとると声が変わる、食べ物が口からこぼれる、飲み込んでも食べ物が口の中に残る、食べ物がつかえる、などで嚥下障害があることに気がつくことがあります。また、嚥下障害により食事が上手くとれないために体重が減る、低栄養や脱水を起こす、飲み込んだものが気管に入ったり(誤嚥)、窒息したりする、ということもあります」。

※引用:嚥下障害とは|日本歯科医師会「嚥下障害(のみこみの障害)」
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index07.html ,(参照 2023-11-30)

■摂食・嚥下機能障害チェック※

こんな症状が1つでもあったら「摂食嚥下障害(飲み込むこと、食べることの障害)」を疑ってみましょう。

上記の症状がある場合は、専門医を受診することをお勧めします。

※引用:摂食嚥下機能障害チェックシート|東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/shikahoken/pamphlet/hokenjosakusei.files/R2check.pdf,(参照 2023-11-30)

2. 嚥下障害が大きな健康リスクに?嚥下障害になると困ること。

加齢とともに起きる嚥下機能の低下は、本人では気づきにくいことが多いです。滑舌が悪くなった、食べこぼしが増えた、むせることが増えた、柔らかいものばかり食べるようになった、などの些細なトラブルを放っておくと、それが食欲低下、低栄養、口腔機能を低下させるリスクが高まり、栄養障害にもつながります。最近の調査※では、オーラルフレイル(口腔機能の低下が全身の衰えにつながること)の人は要介護状態になるリスクが高いこともわかっています。
体は衰えているのに気持ちは若いままお父さんが子供の運動会に出て転んでしまう…なんてこと、ありますよね。嚥下機能も同じで、気づかない間に衰え、進行してしまうと身体への影響が大きくなってしまうことがあります。

※神奈川県歯科医師会|オーラルフレイル②~オーラルフレイルは低栄養、要介護状態のサイン~「介護認定されていない高齢者約2,000人のお口の健康状態を16項目にわたり調査した結果」
https://www.dent-kng.or.jp/colum/information/606/ ,(参照 2023-11-30)

3. 嚥下障害のためにできることとは。

■口腔体操、リハビリ

口腔体操は、お口のラジオ体操のような位置づけです。食事を始めるための準備体操であり、日々継続することで飲み込む機能を低下させない役割もあります。
トラストガーデンの介護付有料老人ホームでは、毎食前に口腔体操を行っています。また、機能が低下して部分が分かると「この方は舌を鍛える運動」「この方はのどを鍛える運動」など個別対応のリハビリプログラムを組み立てて、より踏み込んだ対応をします。

【参考動画】YouTube トラストガーデン公式チャンネル
「口腔体操で誤嚥予防 -1」
「口腔体操で誤嚥予防 -2」

■口腔ケア

歯磨きやうがいでお口の中を清潔に保つことは、嚥下障害の予防にとても大切な基本です。口腔ケア用のグッズを使用するのもお勧めです。いわゆるテレビCMで宣伝している歯ブラシや歯磨き粉などは、健康な一般の人向けの製品です。高齢の方に合った正しい口腔ケアグッズで、口腔環境にあった口腔ケア方法を知ることが大切です。
老人ホームでは介護度によって、毎食後、歯磨きの声掛けや仕上げ磨きなど、お一人おひとりに必要な支援を行っています。
口腔ケアの方法は、また別の回で詳しくご紹介します。

■食事と服薬の工夫

嚥下の状態を知り、嚥下機能が衰えてきたことを認識すれば、料理の仕方を変えたり、食事中の水分摂取を意識したりと日常生活のなかで対策をとることができます。実際に、食べなかった食事をもうひと手間かけてトロトロに煮込んだら食べることができた、というケースもあります。どんな状態のものなら食べられるのか?など、専門家のアドバイスを聞いて早めに対応することが大切です。
服薬時に、薬が飲み込めず水だけが先に入ってしまう、薬を飲むときにむせるなど、飲み込みにくさを感じる方がいらっしゃいます。そのような時は、服薬ゼリー使ったり、薬剤師に確認して問題なければ錠剤を粉砕したりして、飲みやすい状態にして服薬します。

トラストガーデンで提供する介護食「軟菜食」(イメージ)

4. 老人ホームの嚥下障害への取り組みとは。

■プロによる日々の口腔ケア

老人ホームの中には、言語聴覚士(ST)や歯科衛生士といった専門職が在籍している施設もあります。
トラストガーデンでは、言語聴覚士が機能訓練指導員として在籍する施設があります。また、本社に機能訓練チームとして言語聴覚士と認定歯科衛生士(老年歯科)が在籍し、施設を巡回したり、スタッフに対して食事や口腔ケアに関する研修会を開催したりしています。
介護スタッフと専門職とで日々の入居者の食事や口腔ケアの様子を共有し、または介護スタッフが知識を深めることで、嚥下機能に些細な低下がみられ始めた場合、また嚥下障害になってしまった後も、専門職と現場の介護スタッフとが連携して、お一人おひとりの状態に合わせた対応が可能です。また、介護スタッフ自らが、「最近食事でむせているな」などと入居者の変化に気付けるようになり、言語聴覚士や嚥下評価を行う歯科医師などの専門職に変化を伝えて、早目に対応をすることができます。

■訪問歯科医師との連携

老人ホームによっては、連携している歯科医師がホームに訪問し、定期的に受診できる機会があります。
トラストガーデンでは、嚥下障害や老年歯科に詳しい歯科医師が定期的に訪問し、施設内で受診する機会を設けています。一般的な虫歯の治療や、義歯の調整などの歯科診療に加え、口腔ケアの実施や指導、詳細な嚥下評価、食事中の注意点など助言をもらうこともあります。

5.まとめ

お口は健康の入り口です。
私たちは、食べ物を口に入れ、噛み、飲み込み、胃へ送り栄養を摂取することで、健康を維持しています。
嚥下機能が衰えると、食事をすること自体が辛い行為になってしまいます。「食を楽しむ」という人生の楽しみを長くつづけるためにも、小さな異変に気付いたら専門家を受診することが大切です。
家族で一緒に食事をする際に、以前と変わった様子はないか?少し注意して観察してみましょう。また、ご家族が親御様の歯科通院に付き添い、歯や歯茎など口の中の状態を確認することもお勧めします。

年末年始など家族が集まる機会に、ぜひご家族で、お口の健康についても話し合ってみてはいかがでしょうか。

記事監修

株式会社ハイメディック 機能訓練サービス担当

■言語聴覚士
■認定歯科衛生士(老年歯科)

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