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シニアライフ

高齢者の「食が細い」に要注意。食事を意識して「フレイル予防」を。

高齢になってくると「あまり量を多く食べられない」ということもしばしば。食の細さは健康寿命にも関わる「フレイル」とも関係が深く、自立した生活のためには、フレイル予防に力を入れた食事がおすすめです。正しい知識を持って、食事や栄養面の健康管理に生かしていきましょう。

フレイルとは?

フレイルは「加齢に伴い、心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存なので影響もあり、生活機能障害がおきたり、要介護状態となったり、疾病などの重症化を招いたりするなど、心身の脆弱化が出現するが、一方で、適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態(2016年厚生労働白書)」です。フレイルを放置すると要介護になる一方、予防することで健康寿命を延ばすことができるので、今後の後期高齢者の健康にはフレイル予防が重要だといえるでしょう。まずは「フレイル」について知っていきましょう。
※フレイルという言葉は英語の「frailty(名詞), frail(形容詞)」が語源です。予防することで要介護になるのを遅らせることができるので、それまで日本語の訳語として使われていた虚弱、老衰、脆弱は老化の終末状態をイメージさせ不適切ということでカタカナ英語の「フレイル」を使うことになりました。

「フレイル」という言葉は、医学用語である「Frailty(フレイルティー)」が語源で、日本語では「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味します。健康と要介護状態の中間を指し、フレイルが進行すると要介護状態になる可能性が高くなるため、早い段階からフレイル予防=介護予防に取り組むことが大切です。2016年(平成28年)厚生労働白書によると、「加齢とともに、心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能障害が起きたり、要介護状態となったり、疾病などの重症化を招いたりするなど、心身の脆弱化が出現するが、一方で、適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」と定義されており、今後の後期高齢者の健康にはフレイル予防が重要だと言えるでしょう。 

 

フレイルになると、どうなるのか?

フレイルの原因はさまざまですが、加齢に伴う食欲不振から始まった場合、まず慢性的な低栄養状態が起こります。そこから加齢に伴い筋肉の量が減少していく現象である「サルコペニア」となり、身体機能も低下します。それが原因で日常生活での活動量が減り、エネルギー消費量も減少してしまうため、さらに食事量が減ってしまう。そして慢性的な低栄養状態に…という悪循環(フレイルサイクル)に陥ります。転倒骨折のきっかけにもつながり、要介護状態へと進む可能性が高くなるのです。

フレイル予防・改善に大切な3つのこと

フレイル予防・改善には大切な3つの要素があります。
1.「食事(栄養)」・・・良質なたんぱく質をはじめとした栄養素をバランスよく摂る
2.「運動(筋肉)」・・・その人の状態にあった適度な運動を続ける、筋力を維持する
3.「人との交流」・・・社会とのつながりをもつ
ここでは、1の栄養バランスについて詳しくみていきましょう。

日々の食事から、フレイル予防を目指そう

慢性的な低栄養を入り口にフレイルサイクルに陥ることが多く、食事におけるフレイル予防は、介護用にも大切な要素です。高齢期における体重減少は筋肉や骨量の減少を伴いやすく、元気なうちから食事と運動で体重や筋肉量・骨量を維持することが重要です。

フレイルサイクルに陥らないために、重要なたんぱく質。

「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省、2020年版)では、65歳以上の低栄養予防やフレイル予防のために、50歳以上が目標とするたんぱく質摂取量の下限値が他の年齢区分よりも引き上げられました。健康のためにと運動をしていても、筋肉の材料となるたんぱく質が不足していては、かえって体調不良を引き起こす要因となる可能性もあります。

実は若年層とほぼ差がない、たんぱく質摂取の目標量

身体活動レベル
Ⅰ :1日のほとんどを座って過ごしている
Ⅱ :座って過ごすことが多いが家事や買い物、軽いスポーツなどを行っている
Ⅲ :移動や立ち仕事が多いまたはしっかりスポーツを行っている

65~74歳男性ならばⅠのたんぱく質目標量は77~103g、②は90~120g、③は103~138gというように、運動量が増えるほど増加します。65~74歳女性であればⅠ58~78g、Ⅱ69~93g、Ⅲ79~105g、と、男女ともに実は18~64歳の目標量とそれほど差がなく、意識して摂取することが求められます。

簡単な工夫で、今の食事にたんぱく質をプラスしよう。

普段の食事に、たんぱく質が豊富に含まれている食品を足したり、差し替えたりするひと工夫で、摂取量を増やしていくことが可能です。簡単なところから工夫してみましょう。
朝食も、いつもはバターだけのトーストにハムやチーズをのせ、ヨーグルトをプラス。またいつもの食事に枝豆や納豆を足したり、味噌汁に豚肉を足して豚汁にしたりするのも手です。ほかにも、缶詰めや冷凍食品を利用するなど、プラス1品に便利なものを常備しておくのもよいでしょう。
※たんぱく質摂取について、腎臓疾患のある方は医師にご相談ください。

老人ホームでのフレイル予防食と改善事例

リゾートトラストグループのシニア向け住宅「トラストガーデン」では、フレイル予防食を提供しています。カロリー、たんぱく質は厚生労働省推奨量を上回る栄養価指針を定め、ビタミンDやカルシウムについても、「日本人の食事摂取基準」に沿ったメニューが考えられています。そのため、低栄養リスクがある入居者が減少したというデータがあります。

【トラストガーデンの栄養価指針】

  • ※厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年度版)75歳以上女性概要より

通常食にも、介護食にも、良質なたんぱく質を。

トラストガーデンの食事は、肉や魚、豆、卵、乳製品など良質なたんぱく質が含まれる食材をバランスよく取り入れ、食事面から筋力や免疫力の維持・向上をサポートしています。
また、介護食にも力を注いでいます。通常食と同様のクオリティで提供するべく、本社の開発チームや提携する食事委託会社と共に、食材の調理法を見直し、全ての食事形態で提供ができるメニューを開発するなどさまざまな取り組みを行っています。

厚生労働省推奨量より高い栄養価の食事で、BMI値の改善事例も。

BMI(ボディマス指数)の値は、フレイル改善に関わる大切な数値です。
トラストガーデンでは「1日あたり、エネルギー1,700kcal前後、たんぱく質75g前後」という栄養価指針を定めていますが、この食事により実際にBMI変化が確認できました。

  • ※介護付有料老人ホーム「トラストガーデン用賀の杜」入居者の2019年6月と12月のBMIを比較
  • ※BMIとは、体重と身長から算出される、肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数のこと
  • ※「一般高齢者・在宅療養患者」データ出典:一般社団法人 日本老年医学会「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」

いつまでも食事に楽しみを。

食事には健康を担う大切な役割があります。だからこそ、毎日楽しんでいただけるよう、運営側では様々な目線で工夫を凝らしています。
毎日の楽しみの一つである食事。有料老人ホームなどシニア向け住宅を検討する際は、食事を楽しみながら、きちんとした栄養素も摂取できる環境を選んでいきましょう。

まとめ

いかがでしたか?元気なうちからフレイル予防ができるよう意識して食事を改善するなど、少しでも家族が笑顔でいられるような食事を心がけることも大切です。また、元気なうちだからこそ、自分に合った有料老人ホームなどのシニア向け住宅を検討することができるものです。「おいしいものを食べながら健康的に過ごす」ためにも、食事をひとつの選択肢とするのもよいかもしれません。

参考:
東京都福祉保健局ホームページ「東京都介護予防・フレイル予防ポータル」
公益社団法人 東京都医師会ホームページ「フレイル予防」

記事監修

下門顕太郎 医学博士
内科医・老年病専門医

医療法人社団ミッドタウンクリニック常務理事
東京医科歯科大学名誉教授
グランドハイメディック倶楽部 常務理事/ハイメディック東京ベイコース 循環器内科・老年内科・内科一般

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