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実は家の中が危ない?高齢者の転倒予防とは

高齢者が、転んで脚を骨折したり頭を打ったりしたことが原因で、介護が必要になったという話をご存知でしょうか。高齢者の介護が必要になった主な原因は、「骨折・転倒」が全体の約13%を占めているそうです※。
今回は、健康寿命を延ばすためにとても重要な、「転倒予防」について理学療法士がお話します。

※消費者庁.“高齢者の事故を防ぐために”
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_055/ ,(参照 2023-12-18)

1.転倒の要因には2種類ある

なぜ人は転ぶのでしょうか?
「段差につまずいて転んでしまう」ことが、まず思い浮かぶと思いますが、この躓いて転ぶ要因は、外的要因と内的要因の2つに分けられます。

■外的要因:周囲の環境に起因する
段差、障害物、履物(靴・靴下)、滑りやすい床・場所、家具(配置・高さ・安定)、部屋の広さ、部屋の照明(暗さ)、手すりの無い階段、など

■内的要因:本人に起因する
・加齢性変化によるもの
筋力・感覚・バランス・視力・聴覚などの低下
・身体要因によるもの
めまい、痛み、起立性低血圧、不整脈、脳梗塞、パーキンソン病、認知症、変形性関節症、体型(肥満・やせ)、など
・薬の影響によるもの
降圧剤、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、など

転ばないようにするためには、内的要因と外的要因に分けて、対策を考える必要があります。

2.自宅に潜む転倒の危険

実は一番多い、自宅での転倒。
東京消防庁のデータによると、高齢者の救急搬送の約8割が転んで怪我をした人で、そのうち約6割が自宅だったそうです。さらに驚くのは、その約9割が自宅の中(屋内)だったということです。
家の中にはどんな危険が潜んでいるのでしょうか。

■高齢者の初診時程度別救急搬送人員(令和元年)

■高齢者の事故

平成27年からの5年間で、高齢者の事故は年々増加しています。
救急搬送では、平成27年には68,122人であったのが、令和元年には83,905人(+15,783人)に増加。その搬送要因の約8割が転倒事故(その他と不明を除く)。
転倒は、年齢が上がるとともに割合も増加し、約4割の人が入院の必要がある中等症と診断されています。

■家の中で転倒した場所

1位 居室・寝室
2位 玄関・勝手口
3位 廊下・縁側・通路
4位 トイレ・洗面所
5位 台所・ダイニング

家の中には、目立ちにくい軽微な段差や障害物がたくさんあります。敷居や部屋の境目などのちょっとした段差、カーペットや玄関マットなどの敷物、こたつ布団、電化製品のコード、床に置いた荷物や段ボール箱、など。足を上げずに歩く「すり足歩行」の方は、特に注意が必要です。
そのほか、立ったまま靴を履こうとしてバランスを崩す、フローリングの床で滑る(スリッパや靴下)、浴槽から出ようとして手や足が滑る、といった危険もあります。

※イメージ:注意が必要な部屋(外的要因)

※東京消防庁.“救急搬送データからみる高齢者の事故”
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/202009/kkhansoudeta.html ,(参照2023-12-18)

3.転倒予防の対策や取り組み

まず、家の中ですぐにできる対策としては、危ない段差や障害物が無いかを探すこと、そして可能な限り外的要因を避けて生活するか、それ自体を無くすことです。かといって、大掛かりな改修工事を決断するのは難しいと思います。

まず、ホームセンターなどに売られている商品を活用するなど、安価で簡単に実施できることをご紹介します。
・段差解消商品を使って、段差にスロープを付ける
・カーペットやじゅうたんには滑り止めシートを敷く
・電源コードをまとめる
・床に置かれた荷物や布団をそのままにせずに片付ける
・滑りやすいスリッパや靴下を履かない
など。

それでも改修工事が必要な場合は、介護保険を申請して住宅改修費支給を活用しましょう。条件がありますが、段差解消や手すりの設置などが対象です。他にも、工事を伴わない手すりは、福祉用具貸与を活用してレンタルすることも可能です。

※イメージ:整えられ安全性の高い部屋

次に、内的要因への、自分でできる生活習慣を整える対策をご紹介します。
・1日の起床時間、臥床時間のリズムを整え、習慣化する
・日中にずっと同じ姿勢でいることを避ける(寝っぱなし、座りっぱなし)
・ベッドや布団から突然起き上がらない(急な動作を避ける)
・朝起きたら、脳と体を目覚めさせる(着替える、顔を洗う、体操をする、日光を浴びる、朝ごはんを食べる)
など。

■老人ホームでの取り組み

介護付有料老人ホーム、トラストガーデン・フェリオでの転倒予防の取り組みをご紹介します。
施設の機能訓練指導員が、ご入居者にどのような内的要因や外的要因があるのか評価をします。その要因に対して個別リハビリ、集団リハビリ、生活リハビリ、アクティビティへの参加を計画・実施したり、その方に合った杖や靴の選定したり、安全な居室環境の提案などを行っています。

4.さいごに

年末年始、久々にご家族に会ったら、「最近よく転んでいるようだ」「部屋が散らかっている」、そんな変化に気づくことがあるかもしれません。
冒頭でお伝えした通り、転倒は介護が必要になる原因の一つです。
家族で集まる機会に、自宅の中に潜む危険について話し合ってみてはいかがでしょうか。大切な家族がより長く元気に生活するために、転倒予防について考えてみましょう。

「その方らしく、楽しく生活を送っていただくために」 、トラストガーデン・フェリオの機能訓練指導員は、転倒予防プログラムの立案・実施や、転倒の危険性を把握して、環境整備や生活習慣の提案をしています。
このコラムを読んでいただいたのを機に、転倒予防の重要性に対して少しでも関心を持っていただけると幸いです。

※参考
国立医療長寿健康センター.“転びやすくなる原因は?”https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/22.html ,(参照 2023-12-18)
政府広報オンライン.“たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?”https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202106/2.html ,(参照 2023-12-18)

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記事監修

株式会社ハイメディック所属 理学療法士

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