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シニアライフ

認知症とは?知っておきたい基本の「き」

9月21日は世界アルツハイマーデーです。1994年「国際アルツハイマー病協会」は、世界保健機関と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定。この日を中心に認知症の啓蒙を実施しています。
今回は「世界アルツハイマー月間」にちなんで、知っているようで知らない認知症の基本についてご紹介します。

認知症予防、進行予防

「日本における65歳以上の認知症の人の数は、2025年には約650万〜700万人に増加し、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されています(出典「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」2015年3月二宮利治)」。※
認知症にはさまざまな種類があり、代表的なものとして、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種類があります。症状や進行速度も多様です。

表1)認知症の人数

POINT-1:認知症とは?

認知症とは、「脳の病気や障害など様々な原因により認知機能が低下し日常生活全般に支障が出てくる状態」のこと。※

POINT-2:認知機能とは?

「ある対象を、目・耳・鼻・舌・肌・関節・筋肉などの感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断をしたり、問題解決をしたり、計算や言語化したり、記憶に留めたりする働き」のこと。※

「あれ、あれ、何だっけ…」と言葉が出なかったり、人の名前が出てこなかったり、昨日何を食べたか思い出せなかったりした経験が、皆さんもあると思います。しかしそれだけで認知症とは言えません。ヒントによって思い出したり、間違えても、それに気付いて訂正をしたり、今後の対策を立てたりすることができる状態であれば、ごく一部の認知機能に一時的な機能低下が起こってしまったということです。
しかし、認知症の方は、先にご紹介した症状が継続して見られ、誤りに気付くことも難しくなり、身の回りのことや一人での外出も難しくなるなど日常生活にも支障が出てきます。そうなると周囲のサポートが必要になります。
 ※“こころの情報サイト-こころの病気を知る-認知症”https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=WwE9LLpYbVZTIDMI, (参照 2023-08-01)

認知症の症状とは?

認知症の症状には、【中核症状】と【周辺症状】があります。周辺症状は「行動・心理症状(BPSD)」とも呼ばれます。

表2)中核症状,周辺症状

【中核症状】

中核症状とは、脳の病変によって発症する認知機能障害のこと。
(記憶障害、見当識障害、失語・失行・失認、遂行機能障害など)
例えば、人や物の名前など覚えていたはずの言葉が出てこなかったり、「暑い、寒い、冷たい、温かい」といった感覚が鈍くなり、真夏なのにコートやニット帽などを着込んだり、できていたはずの動作の手順を忘れてしまい順番を間違えてしまう、などのことが起こります。

【周辺症状】

周辺症状とは、中核症状にプラスして、生活環境や人間関係、本人の性格などが関係して現れる「行動や心理の症状」のこと。
(症状の例:無気力、無関心、不安、焦燥、イライラ、興奮、攻撃、過食、徘徊、幻覚、妄想、不眠、など)
例えば、「徘徊」の場合、外に出掛けたものの、道がわからなくなり、人に道をたずねることもできずに歩き回ってしまう。「妄想」の場合、「盗まれた。犯人は●●だ」と、自分でしまった場所を忘れた物や既にない物を盗まれたと言い、身近な家族や施設の介護スタッフが犯人だと疑う。

認知症の方を介護するときに難しいと言われているのが、周辺症状です。対応により悪化もすれば、改善したり無くなったりするともされています。
危険だからと外出させなかったり、本人の行動や言動を否定したり、行動を制限させるなど、対応によっては周辺症状が悪化してしまう可能性が高いです。
周辺症状の背景には、なんらかの目的や理由があるので、家族が理解できない行動でも、なぜそうするのか?と考えてみましょう。

 

身内だと、どうしても感情があらわになったり、きつい言い方になったりしがちです。その行動の背景にある不安や恐怖といった感情を理解し、適切な対応で、周辺症状の軽減を目指しましょう。
 周辺症状の治療方法としては、薬物療法・非薬物療法があります。次の項目では、老人ホームでの非薬物療法=取り組みをご紹介します。

認知症予防、進行予防

介護付有料老人ホーム「トラストガーデン」「フェリオ」シリーズで取り組んでいる、認知症予防や進行予防の一部をご紹介します。

■体操
体の体操だけでなく、頭の体操を加えます。期待できる例として、以下のものがあります。
1.見当識訓練
日付・季節など、誤った外界認識の是正を促し、行動面や情緒面などの、不適応の改善が期待できる。
2.認知リハビリテーション
漢字想起で記憶力・想像力を引き出し、計算で遂行力や判断力にアプローチ。
3. 二重課題訓練
運動課題と思考課題を同時に行い、認知機能をより賦活することが期待できる。

■園芸療法
1.土づくりや種まき、植物の栽培から収穫などを行いながら、日光や外気に接することで、日中の運動量が増える。四季の変化や昼夜の区別などの生活リズムを整える。
2. 外気や自然に触れることで、リフレッシュ効果を生み、ストレス軽減や、作業による疲労から自然な睡眠を促す。
3. ご入居者同士の会話や共同作業から、交友関係に良い影響を与え、互いに笑顔で接する機会が増える。
園芸療法のようす
【関連記事】ポジティブな感情を引き出す、老人ホームの園芸療法。

■色かるた
1.色の視覚刺激を楽しむ。
2.『色』から連想する、昔の記憶をたどることで回想法※につなげることが期待できる。
3.コミュニケーションを取ることで、脳の活性化につながり、記憶をつなぐことにより不安の解消が期待できる。
3.色の名前を覚える、数を数える、文字を読むなどの認知機能の活性化が期待できる。
色かるたのようす
※昔の懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い家庭用品などを見たり、触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う一種の心理療法
※回想法 | 健康長寿ネット -公益財団法人 長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/kaisou.html, (参照 2023-01-11)

まとめ:「認知症=不幸ではない」

認知症の方を支えるご家族やご親戚が心の余裕を失うと、認知症の方の気持ちを受け止めることが難しくなります。この記事が、少しでも「認知症とは?」を知っていただくきっかけになれば幸いです。
自分自身やご家族、友人など、周りの人について「もしかして認知症では」と思われる症状に気づいたら、ひとりで抱え込まないことが大切です。

ホームでは、同じ時代を生きてきた仲間とともに、認知症を患っていても、明るく楽しく生活されている方がたくさんいらっしゃいます。
認知症=不幸ではない。
認知症を患っていても、その人が明るく楽しく、その人らしく生活できるようにサポートしていくことが、老人ホームの役割だと思っています。
もしホームでの取り組みや対応について、詳しく知りたい方やご興味のある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

記事監修

作業療法士、介護支援専門員、認知症ケアマッピング基礎ユーザー(株式会社ハイメディック所属)

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