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老人ホームの暮らし

実際にはどんなことをやっているの?老人ホームでの園芸療法プログラムを紹介。

五感を刺激し、回想法やリハビリにもつながる園芸療法。
前回のコラム『ポジティブな感情を引き出す、老人ホームの園芸療法』では、「園芸療法とは何か」そして、その「効果はどのようなものか」「具体的な事例」などをお話しました。
トラストガーデンの園芸療法プログラムについて、詳しくご紹介します。

1.園芸療法とは?トラストガーデンの3つのポリシーとプログラムの組み立て方

ストレスの軽減や体力向上、モチベーションの維持や他者とのコミュニケーションなどを目的として行うのが「園芸療法」と、前回のコラムでご紹介しました。

そして、トラストガーデンの介護付有料老人ホームにおける園芸療法は、機能訓練(リハビリ)のひとつとして、3つのポリシーを軸に行われています。
1-こころが動くから体が動く
2-五感や感性に働きかけていく
3-園芸療法という場を使って入居者同士、入居者とスタッフ間のこころの交流を図る
大きな庭、屋上ガーデンがある施設や、ホテルのような落ち着いた雰囲気の施設など特徴も設備もさまざまですが、植物を通した上記3つに当てはまるプログラムであれば、型にとらわれず、積極的に導入しています。

詳しくはこちら→コラム:ポジティブな感情を引き出す、老人ホームの園芸療法。

プログラムは、園芸療法を統括担当している作業療法士と園芸療法士が、各施設の要望を取り入れ、施設の特徴や強みを生かせるように組み立てます。
(例)
■トラストガーデンの「ガーデン」にちなみ、ガーデニングや家庭菜園(土いじり)にフォーカスし、身体や精神的機能、社会的認知機能などの向上を目指す
■日本の文化的要素を取り入れた生け花やお茶会で、入居者の感性を生かす
■生花を使ったフラワーアレンジメントなど花を楽しむことで、季節を感じる
■入居者と一緒に家族も参加して、思い出に残る、形も残る作品を作る
など。

2.プログラム紹介 「夏野菜の播種ーフレッシュな野菜からー」

2024年のテーマは「育てる、食べる」
「種を土にまき、苗を育て、畑に植え替え、実った野菜を収穫して食べる」という、栽培から収穫まで一連の過程を行います。
※この取り組みは一部施設での実施ですが、多くの施設で野菜の栽培、家庭菜園を行っています。

大田区の介護付有料老人ホーム トラストガーデン東嶺町で2024年5月に行われたプログラム、「夏野菜の播種ーフレッシュな野菜からー」の様子をご紹介します。
※播種(はしゅ)・・・種をまくこと、種まき

手順1:種を採取するための野菜を用意する(今回はピーマンとミニトマト)
オーガニックや有機栽培の野菜が良いです(園芸療法士 談)。

手順2:種をまくための土を用意する(小さな育苗用ポットがオススメ)

手順3:野菜を切って種を取り出す
 ※種を取り出した野菜は、おいしく召し上がってくださいね。

手順4:種を土にまく

手順5:土に水をあげる
 ご入居者とスタッフが一緒に水やりをしながら、「大きくなーれ、大きくなーれ」と楽しそうにおまじないをかけていました。

手順6:野菜の種類と自分の育苗用ポットがわかるように、ヘタなどを飾り付ける

今回のプログラムは、いったんここで終了。

あとは、発芽するまで土の表面が乾かないように水をやり、世話をしていきます。
発芽した苗がある程度大きく育ったら、畑やプランターなどに植え替えます。

(トラストガーデン東嶺町 支配人より)
花を生けたり花壇に植えたりするだけではない、毎月違うプログラムを実施してもらっているので、皆様とても楽しみにされています。園芸がお好きな方も多く、さらに笑顔があふれます。
トラストガーデン東嶺町では、中庭に畑を2つ準備しているので、植え替えする日が待ち遠しいです。

3.このプログラムについて(作業療法士と園芸療法士より)

このプログラムは、新鮮な野菜から種を採取して育てていくプログラムで、生活リハビリを目的として、東日本エリアの一部施設で実施しています。
生活リハビリとは、「日常生活を送るうえで、必要な生活機能の改善・または維持」を行うことです。
野菜の世話(水やり、雑草取りなど)をすることが日課となり、日々の成長を楽しみ、季節の移ろいも感じられ、中庭やルーフガーデンへの移動が生活リハビリにもなります。
新鮮な野菜を包丁で切り、指先を使って種を取り土にまくところまでを行います。野菜や土に触れて、香りを嗅ぐという、何気ないようなことでも、「野菜や土に触れた」「包丁を握った」「切りたての野菜の良いにおい」という経験が、良い刺激になり、脳の活性化にもつながると考えます。

販売されている種とは違い、発芽率は低いのですが、食用の野菜や果物の種からも育てることができるのです。
調理する時や食べる時には捨てていた種も「よく見るとこんな形だったのか」と思ったり、うまく芽が出て成長し花が咲いて「初めて見た、かわいらしい花が見られて楽しい」と感じたり。そして、葉が虫に食われたり、実がなり皆でおいしく食べたりと、楽しみもさまざま。毎日世話をして自分で育てた喜びを感じていただければ、何よりです。

成長の様子をSNSでご紹介していきます。ぜひご覧ください。
トラストガーデン東嶺町 Facebookページはこちらをクリック

記事監修

株式会社ハイメディック所属 作業療法士、園芸療法士
■作業療法士(介護支援専門員、住環境福祉コーディネーター2級、認知症ケアマッピング基礎ユーザー)
■園芸療法士(調理師、認知症ケア専門士)