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シニアライフ

知っていただきたい、「介護の日」と認知症介護のこと

11月11日、「介護の日」をご存知ですか?
「介護について理解と認識を深め、国民に対して介護の啓発を実施するための日」として、2008年(平成20年)7月に、厚生労働省より発表されました。
この日にちなんで、今回は介護との関連が強い「認知症」とその介護についてご紹介します。
この機会に、認知症や介護への理解を深め、考えるきっかけとしていただければ幸いです。

1. 「介護の日」とは

「介護についての理解と認識を深め、介護サービス利用者及びその家族、介護従事者等を支援するとともに、これらの人たちを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から、高齢者や障害者等に対する介護に関し、国民への啓発を重点的に実施する日」1) として設定されました。
「いい日、いい日、毎日、あったか介護ありがとう」という思いから、親しみやすく覚えやすい語呂合わせの「いい日、いい日」にかけて、11月11日としたそうです。

日本の高齢化率は29.0%

令和5年版高齢社会白書によると、2022年10月1日時点の65歳以上人口は29.0%に達しており、2037年には国民の3人に1人(33.3%)が65歳以上になると見込まれているそうです。
そして、100歳以上人口は9万人を超え、「人生100年時代」とも言われています。そこで重要なのが「健康寿命」です。

「健康寿命」とは?

簡単に言うと、「健康に日常生活を過ごしている」期間のことです。つまり、平均寿命と健康寿命との差が、病気の治療をしていたり、介護が必要だったりする状態と言えます。

平均寿命、健康寿命ともに年々延びていますが、その差である、男性で約9年、女性で約12年が、「日常生活に何かしらの制限がある期間」ということです。病気や骨折、認知症などにより介護が必要になる可能性は、誰しも否定できません。
もしも自分や家族が、認知症になったり、病気などで寝たきりになったりして「介護が必要になったら」、家族の介護をする立場になったら。
いざという時に慌てないためにも、日頃から介護についての理解と認識を深めておきましょう。

※1)厚生労働省.福祉・介護“介護の日・福祉人材確保重点実施期間”.(参照2023-10-27)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/kaigo-day/index.html
※参考)内閣府「令和5年高齢社会白書」、厚生労働省「e-ヘルスネット」

2. 知っているようで知らない認知症の基本

「介護」という言葉から「認知症」をイメージする方も多いと思いますので、少しご紹介したいと思います。

日本で、65歳以上の認知症の人は、2012年では462万人でしたが、2025年には約700万人にまで増加すると予測されています。高齢者の約5人に1人が認知症という計算だそうです。
一言で認知症と言っても、いくつかの種類があり、種類によって症状や進行のスピードなどもさまざまです。
認知症には、脳の病変によって発症する認知機能障害と、生活環境や人間関係、本人の性格などが関係して現れる症状があります。
その症状に対して、特に身内だと、何度も同じ話をされてイライラし、否定したり責めたりしてしまいがちです。
認知症に対する薬物療法がありますが、周囲の方の接し方によっても症状が変わってくるそうです。
※参考)国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト“認知症”」

次に、接し方などの「対応」と、実際に介護施設で働くスタッフの声をご紹介します。

認知症については、こちらのコラムでご紹介しています。

コラム“認知症とは?知っておきたい基本の「き」”

3.認知症の方への接し方

まず、実際に介護付有料老人ホームでよくみられる事例を元に、認知症の方への接し方のポイントをご紹介します。

【事例1】暑いのに着こんでしまう

認知症の母親が、真夏なのにコートやニット帽、手袋を着込んだり付けたりしている事例です。
「真夏なのに寒いわけないでしょ、ちょっと脱いでみて」「こんな格好して歩いたら笑われちゃうわよ」など、否定ばかりしてしまいがちです。このような対応を続けてしまうと、頑なに服を脱がなくなってしまう場合があります。
一方で寄り添った対応は、「(カレンダーを見せて)お母さん、今何月だっけ?」「どれだけ暑いか一緒にベランダに行ってみよう」「似合っているけど、熱中症で倒れちゃうかも」など、否定や強制をせずに、その発言を受け入れながら、母親が納得できる情報を提供することです。

【事例2】メガネがない!

認知症の父親が、寝室でメガネを探しています。「泥棒が入ったんじゃないか?」と、物盗られ妄想に発展していく事例です。
「いつも無くすじゃない…」「泥棒が入る訳ないでしょ!」「お父さんのメガネなんて誰も持って行かないよ」など、責めてしまいがちです。感情と感情がぶつかり、ヒートアップしてしまう場合があります。
一方で寄り添った対応は、「一緒に探してみようか」「(泥棒が入ったんじゃないか?に対して)そうだね、いいメガネだもんね」「今朝メガネかけてたっけ?洗面所とかかな?」など、否定せずに受け止めて、一緒に探しています。本人が、少しでも自分で思い出せるような会話をすることも大切です。


次に、実際に介護付有料老人ホームで働くスタッフに、「認知症介護」について聞いてみました。

Q1.認知症の方が落ち着かないのは、どのような時ですか?

1.介護スタッフAさん
「その方の行動が制限されることでストレスを感じ、不満や怒りに繋がることがあります。常に心の余裕を持って接することは難しいかもしれませんが、その方ができることを、なるべく制限せずに関わっていくことが大切だと思います」。

1.介護スタッフBさん
「私たちスタッフの忙しくてバタバタした雰囲気が出てしまうと、認知症の方が立ち上がってしまったり、落ち着かなくなってしまったりすることがあります。私たちの気持ちがゆったりしている時は、不穏な状態になりにくい気がします」。

 

Q2.認知症介護に対する「思い」を教えてください。

2.介護スタッフBさん
「特に家族(身内)だとイライラしてしまうかもしれません。私には81歳になる母がいますが、自分の母に対しては少し当たりが厳しいような気がします。さまざまなことを一人で背負ってしまうと、“なんで自分だけこんなに辛い思いをするのか“とネガティブに考えてしまう可能性があります。一番大切なのは、「思いやりの気持ち」でしょうか。なので、母が”お風呂に入りたくない、〇〇したくない“と言ったとしても、私が小さい時もそうだったんだろうな、と思うようにしています。”いいかげん“ではなく、”良い、加減“で関わることが、お互いが疲れずに良い状態が保てるのかなと思っています」。

A2.機能訓練指導員Cさん
「私の祖父母は認知症になり、両親が在宅で介護をしていました。両親が介護で疲れている様子をみてきましたが、自分たちだけで抱えるのではなく、親戚を頼り協力し合って介護をしていました。今はさまざまな介護サービスがあるので、親戚だけではなく、介護保険サービスや他の人の力を借りることも、介護をする側にとっては少し息抜きにもなるかと思います。抱え込まないことで、認知症の方に対して、違う見方、接し方ができるようになるのではと思います」。

4.おわりに

今回は、認知症介護について、ご紹介してみました。
「認知症の方の世界を理解する」「物忘れの辛さを理解する」「できなくなってきたことの悔しさを理解する」。認知症だけでなく、日常生活に介助が必要な方の立場に立って「その方がどのような思いで、どのように感じているか?」を考え、寄り添うことが大切ではないでしょうか。

介護を身近に感じてもらえるよう、毎年、全国各地でイベントや取り組みが行われています。
愛知県名古屋市では、介護の仕事のやりがいや魅力を伝えるイベント「なごや介護の日フェア2023」、福岡県では、トークショーも交えた「“介護の日のつどい”認知症あったかホームコンサート2023」が開催されます。
お住まいの近くで開催されていましたら、足を運んでみるのもよいかもしれません。
※開催内容や参加方法などは、各主催者へお問い合わせください。